毎日新聞きょうの夕刊5面「Crossroads」というコーナーに勝田知巳という人が記事を書いている。はじめの何行かを引用。
かつて「映画の学校」と呼ばれ、映画作りのイロハを教え込む場でもあった撮影所がその機能を失ってから、人材育成の問題が映画界を悩ませていた。……
この文章を読むと勝田さんという人は若い方だろうと想像できる。わたしは1973年(昭和48年)から4年6ヶ月東映東京撮影所で契約助監督として働いた。撮影所が「映画の学校」と思うことができはじめたのは監督第1作『純』を撮り終えてしばらくたってからのことだった。撮影所は特別の場所ではなくごくごく普通の職場でしかない。刑事が育たないという話はもう20年くらい前からときどき新聞記事などで見る。「事件」は刑事を育てるために起きるわけではない。同じように撮影所は映画を効率よく作るための工場であってけっして「学校」ではない。
水をさすようで申し訳ないが日本映画学校で講師をしたり福岡市で映画塾をやってみた経験から言えば、映画に限らず仕事というものは口をあんぐり開けてだれかが呑み込ませてくれるものではないと思う。映画界にほとんど絶望している62歳の老人が言う戯言(たわごと)とお聞き流しください。