プロの道具

 バスに乗るとわたしは運転手さんの真後ろにすわる。運転席のまわりに運転手さんの私物が置いてある。どんなものを持っているのかをそれとなく観察する。それと計器類の近くに必ずと言っていいほど運転手さんは自分の時計をおいている。針ではなく数字が出る量販店などで売っているデジタル・ウオッチが多いようだがいわゆる「鉄道時計」と言われる定番の時計もたまに見る。雑誌で見て知ったので10年前にすぐ買った。いまでも大事に使っている。
 大工さんのカンナとかのこぎり、カナヅチなども見るのが好きだった。大工さんにことわってよく触らせてもらったことを覚えている。
 お巡りさんの警棒と拳銃。あれもプロっぽい。さすがに触らせてくれと頼んだことはないが、本気で交番から盗み出したくなって夜中にまわりをうろついたことがあった。わたしはモノマニアックなのだ。
 衣料量販店できのうトートバックを買った。タクシーに乗るときに必要なもの、例えば地図、磁石、双眼鏡(もしくは単眼鏡)、計算器などを入れるためだ。それにしてもプロの道具というものがなかなか見えにくい時代になっている。大工さんの手入れのいきとどいた道具などいまでは滅多にお目にかからない。コンビニやスーパーの店員が持っている大型のカッターなどもプロの道具と言えばそうなのだが、大工さんのノミの刃の光にくらべると薄っぺらい。
 映画監督の道具といえば小津安二郎監督が監督協会でまとめて発注して作らせたストップウォッチを鎌倉文学館かどこかで見たことがある。そのストップウォッチには35㎜フイルムのコマ数が秒数の刻みの横についていた。わたしはいまでもあのフィルムのコマ数が見られるストップウォッチがほしくてならない。しかしいまやビデオで映画を撮る時代。あの小津さんのストップウォッチはプロの道具ではなくなった。
 わたしはタクシーの運転手をしながら新しいプロの道具をひそかに自分で作りあげようと企んでいる。さしずめきょうはGPSとカメラのついた携帯電話が1円で加入できるなら新しい携帯を調達するつもり。その前に道を覚えないとならないが。
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by hiroto_yokoyama | 2004-09-23 09:29 | ブログ
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