有馬頼義『聖夜の欲情』これもいい小説だ

「好きだとか、きらいだとか、嫉妬(やい、ルビ)たとか、結婚したいとか、一緒に暮したいとか、その人の妻、その人の良人と呼ばれたいとかいうことを、精神的な問題と考えましょう。男と女の間には、もう一つの世界がありますの。それは欲望です」
「欲望……」
「お嬢さまが、きれいなお花をごらんになる。美しい、と感じるのは、精神的なものです。でも、それだけじゃないでしょう。その花を折りたいとか、花びらにさわりたいとか、という気持がありますわ。それが欲望なんです」
「触りたい──忘れてしまったわ。あたしはもう十何年も、ものにさわったことはないわ」
 どうです? ちょっと読んでみたいと思いませんか。わたしは読み終わってからずっと、こんなものを映画にしてみたいと感慨にふけっております。
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by hiroto_yokoyama | 2010-05-31 11:28 | ブログ
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