A.ビアス『悪魔の辞典』(西川正身選訳、岩波書店)の「保険」の項。「おれは胴元を破産させつつあるのだ、という気持のいい確信を、参加者にいだかせてくれる、独創的で近代的な運任せの勝負事。」
生命保険にかぎらないが保険会社がまともに保険金を支払えば会社は破産する、これはあたりまえのこと。わたしは保険会社、銀行(サラ金、高利貸しを含む)、株屋、広告代理店など人のふんどしで相撲をとる仕事が大嫌い。ほかにも恥ずかしい仕事、ジャーナリズム、マスコミ、評論家など自分の手を汚さない楽な仕事はいろいろあるが「こんなことしていていいのだろうか」という反省はしないで嬉しそうに偉そうによく看板をぶら下げておもてを歩けるものだと不思議に思う。こいつら馬鹿じゃないだろうか。 元タクシー運転手が青森かどこかで高利貸しの事務所に火をつけたことがあった。従業員が何人か焼け死んだが、亡くなった人には申し訳ないが、この人たちは生前「こんなところで働いていていいものだろうか? 」という疑問を1度も抱いたことがなかっただろうことはほぼ確からしく思える。生きていくためには何だってする。働くことはいいことだ偉いのだという考え方というより感じ方は社会が近代化、都市化する流れの中では間違いなのだと気づかない人間がこの世の中に多すぎる。わたしはクレジットカードの不正使用や今回の不当な支払い拒否があかるみに出るたびにいい気味だと心中ひそかに快哉を叫ぶのです。被害者の方々は高利貸しの事務員のように殺されなかっただけ幸せだと思うといいのではないでしょうか。 『悪魔の辞典』はわたしが10代のころ医者になろうか映画監督になろうか悩んでいるころ「医者」の項目を見て福岡市呉服町にあった丸善でもとめました。その「医者」の項。 「われわれが病気の時にはしきりと望みをかけ、健康の時には犬をけしかけたくなる奴。」 これを読んだから医学部進学を断念したわけではありません。頭が悪いだけではなく受験勉強におもしろみを見いだせずどうあがいても医学部に入れそうもない。金を積んでまで医学部に入る気などさらさらなく、しぶしぶではなく意気揚々と映画監督を選択したのです。 これを読む若いみなさん。職業選択は10年ほどかけて慎重にやりましょうね。
by hiroto_yokoyama
| 2005-07-07 14:34
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