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仲代達矢さん! お見それしました

 『切腹』を見てきた。14歳のときに見た感動とはまた違ったものがわたしの体内を走った。2年前の胃ガンの手術で切った25センチの古傷が痛む。
 仲代さんはいま日本経済新聞に「私の履歴書」を連載中。銀座に向かう電車の中できょうの26回目をわたしは読んでいた。10年前、拙作『眠れる美女』の江口役にどうかと出演交渉をしたが仲代氏の代理人の断り方が気に入らず仲代さんのこともわたしはこころよく思っていなかった。故・田山力哉氏から「仲代に『なんだ高卒のくせに! 』ってからかうとおもしろいよ。いつもなんとも言えない表情をするんだ」と聞き捨てならないことを2、3度聞いたことがある。わたしは「田山さんはいつもつまらないことを言いますね」と諭すと「なにが悪い。俺は学歴偏重主義者だぞ」という言葉が返ってきた。
 きょうの日本経済新聞を読むともしかしたら田山氏は仲代さんにたいして優しい気持を持っていらしたのかも知れないと思い返した。『切腹』を見てむかしとは違った感想をもったのだが、いまの感想はこの映画は監督小林正樹のものというより俳優仲代達矢のものなのだなぁ、というのがそのひとつ。2つ目は脚本の橋本忍氏はやはり病的なくらいすごいシナリオライターだということ。さいごは『眠れる美女』の音楽を武満徹さんに依頼したが断られた。これも仕方のないことだったのだ。
 なぜだろう? 石堂淑朗さんにせっかく書いていただいたシナリオだがわたしが監督するのではおもしろいものにはならないというご判断が仲代さんにも武満さんにももしかしたらあったのかも知れない。いやきっとそうだ。だが、わたしは原田芳雄さんが主演、音楽を松村禎三氏にお願いして『眠れる美女』を撮ったことを後悔していない。
 そんなことより、仲代達矢主演の『切腹』はやはりすごい映画だ。お見それしました。
by hiroto_yokoyama | 2005-11-27 00:10 | 映画
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