ヒトラーが残したもの

 「…ヒトラーが残したものは、フォルクスワーゲンと全国を結ぶ高速自動車道路だといわれるが、じつはそのほかに、全国をカバーする五千分の一の地図が完備されていた。全世界から驚異の眼で見られている西ドイツの戦後の復興の陰には、この地図が偉大な力を発揮したことは疑う余地がない。」(西尾元充(もとみつ)『空中写真の世界』(中公新書186)17ページ)
 押し入れを片づけていたらいつ、どこで購入したか覚えていないこの本を発見した。ぱらぱらめくると初めのほう(4、5ページ)にも目を引く記述がある。
古くは戦国時代から現代に至るまで、数多くの戦記や戦争のニュースなどを読んでみると、ひとつの共通した現象に気がつく。それは戦いにさいして、いち早く高い山に陣を布(し、原文はルビ。横山)いて、戦場一帯を見下ろしながら作戦計画を立てる、という戦法が古今東西を通じてとられていることである。また戦場にある高地をめぐって、敵味方が入り混じって、はげしい争奪戦を演じたという実例もひじょうに多い。
 これらの事実は、戦場の地形をよく掌握しておいて、敵の動静を観察し、適切な対抗手段が、迅速に講ぜられるように、なるべく高いところから、ひと目で地形を眺めるためであることはいうまでもない。
 単に戦争だけに限らず、われわれの日常生活においても、地理不案内の土地に行ったときや、観光旅行などの場合、高いところから眺めるというケースはひじょうに多いのである。

 目に見えるものはいいが目に見えない「社会」とか「人の気持ち」とか「人間関係」をわたしはどうにか自分をなくすことなく鳥瞰したい。単なる小手先の技術ではなくおのれを組み込んだまま大所高所からものを見るというのは難事に違いない。無理でも少しでも近づきたいからわたしは本を読むのだ。
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by hiroto_yokoyama | 2005-12-03 10:33 | ブログ
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