図書館から文庫本・上下2冊を借りた。巻末の「訳者あとがき」に
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「法廷の証拠書類を読むようだ」といわれるほどの即物的なリアリズム、抒情性をまじえぬドライで平明な文体、──情緒過剰、自意識過剰の現代小説のあとで、デフォーを読むと一種の爽かさを覚えるのも故ないことではない。モルはずるがしこく、抜け目がなく、ふてぶてしい。しかし憎めない存在である。そのヴァイタリティには敬意を表したいくらいだ。エゴイズムの塊りみたいだが、温味もある。ひねくれてもいない。犯罪者の暗さもない。要するにモルの生き方はたくましく、健康的である。それは下層中産階級から上層中産階級にのしあがったデフォーの生き方にほかならない。…(岩波文庫、伊沢龍雄訳『モル・フランダーズ』下巻267~268ページ)
とある。この箇所を見てちゃんと通読したくなった。図書館の本はすぐに返却する。