わたしにはその良さがさっぱり分らない。植草甚一スクラップ・ブック5『サスペンス映画の研究』236ページにジャック・ベッケルのことが書いてある。
(ベッケルは)「……
1932年にジャン・ルノワールのアシスタントになり、1942年にレーモン・ルーロオ主演の『最後の切札』で新人監督として出発、これはついに日本では見られませんでしたが、彼の名を一躍有名にした翌年の作品『赤手のグーピ』はテレビで紹介されたので、ごらんになられたかたも多いでしょう。この二本ともミステリーの要素が濃かったのですが、『赤手のグーピ』が評判になったのは、犯罪をおかす人間の心理がよく描けていたからです。……」
「犯罪をおかす人間の心理がよく描けていた」と言われれば、そう言うものかなぐらいのこと。まだまだわたしは勉強が足りない。(いや勉強すれば飲込みが良くなるというものではないことはよく知っています。問題は才能なのではないだろうか?)