転んでもただは起きない主義のわたしはうつ病のときこそドスちゃんだとばかり『死の家の記録』(工藤精一郞訳、新潮文庫)に挑戦した。
まえにも書いたが体調がよほどいいときでないとドスちゃんの饒舌と「アレクサンドル・ペトローヴィチ・ゴリャンチコフ」などの長ったらしいカタカナ名前には耐えられない。ちょうど半分読み終わったおとついついに分厚い文庫本を放り投げてしまった。たしかドストエフスキーは若いときに読む本だとなにかに書いてあったがその通りかもしれない。強い精神安定剤を服用している還暦まぢかのわたしにはドスちゃんへの道のりはやはり遠かった。