きのう(9月13日)行きつけの古本屋が臨時休業。しかたなくその近くの中古CD屋を覗く。そこで梅原猛・吉本隆明著『対話 日本の原像』(中公文庫)を180円で買った。
裏表紙の宣伝文句。 日本文化の基層構造を縄文・弥生にさかのぼって論じ、日本土着の原宗教と浄土思想、親鸞を対比して、日本人の世界観・死生観を考察する。国家・宗教・言語をめぐる両巨匠による初の対論。 両氏が大正13年(吉本氏)と大正14年(梅原氏)と同世代とは気づかなかった。この本のような対談をなさったことも知らなかった。昨晩からきょうにかけて一気に読み終わる。 同文庫216ページ。(梅原氏の文) 動物はミヤゲをもって天から人間をおとずれた天からの客人であり、それゆえこの客人をもてなし、そしてこの客人の意志に従ってその身をいただき、その客人の霊を天に送り返す。それがアイヌのイヨマンテ(イ=それ、熊の霊、オマンテ=送る。熊の霊を送る)の祭なのである。そしてイヨマンテの祭は熊ばかりでなく、人間にとって大切な役目をする多くの動物についても行われるものである。 もちろん、このような世界観に人間の我意が含まれていることは否定できない。熊や樹に、あなたがたはミヤンゲをもっておとずれた客人かと問うなら、彼らはおそらく、いやいや、私たちはそんなものではありません、人間に殺されるのはいやですというにちがいない。しかし、私はそれは本来自分と同じ魂をもった動物を殺さねば生きていけないというこの人間存在のパラドックスを説明するために、人間が長い間かかって発明した哲学ではないかと思うのである。私はこの哲学の方が、人間は動物にはない理性をもっているので、動物を自分の意のままに支配し殺戮する権利をもっているという哲学よりはるかに健全であると思うが、人類は後者の哲学を前者の哲学に替えることによって巨大な文明を作ったことはまちがいない。 以前わたしはテレビで梅原氏の政治についての意見を聞いてがっかりしたことがある。「つまらないことを言う」という感想をもった。饒舌にすぎるときがある氏の新聞などでの意見や著作に接すると一歩か二歩さがって眉に唾をしてきた。 この本を読んで氏の「日本精神の深層」についての考えが少し理解できたような気がするしアイヌの言葉についての洞察には驚かされた。
by hiroto_yokoyama
| 2009-09-14 21:04
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