「松本清張の時代短篇は光っている! 」

 見出しに書いたのは角川文庫『夜の足音』のオビにある文句。昨晩は収録されている順番で『夜の足音』と『噂始末』を読んで寝た。清張作品がいいのは読後しばらくたってもあれこれと思いをいたすことができる点だ。2、3日まえに読んだ『失踪の果て』では劇中「藤村警部補は警部になった。」という件(くだり)がある。その4ページくらいあとに
……藤村は雑誌を閉じ、煙草を吸った。青い煙がゆるやかに匍(は、ルビ)い上ってゆく。
 それを何気なしに眺めた瞬間だった。ふとある思考が閃(ひらめ)いて、思わず眼が凝乎(ぎょうこ)となった。
 
『額と歯』では途中「水上署では署長が署員全部を集合させて訓示をしていた。」とあって、その7行あとに
 列の中にいた一人の若い巡査が、この時ふと首をかしげた。
とある。
 共にそのあと一挙に事件解決となるのだが、小説だから可能なのだ。映画でそのままやると絶対にうまく行かない。観客はまちがいなく「そんなはずがない」と反発し「ご都合主義」だと笑うかも知れない。画面でどのようにリアリティをもたせるか、そこが難しい。
 そんなことをあれこれ考えているとあっというまに時間はすぎる。とても楽しいひとときだ。ハタから見ると「ついに気でも狂ったか」ととられかねないだろう。
 映像にするならどのように画面を作って組み立てて説得力をもたせるか、そう考えさせられるものが清張作品には数多くある。
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by hiroto_yokoyama | 2010-01-20 07:19 | ブログ
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