『評伝 黒澤明』を読みおわった

 この本の圧巻はなんといっても第5章『七人の侍』。著者の堀川弘通監督は一般の読者にも分かりやすく書かれていると思うがそれでも撮影所で働いたことのある者でないと理解できないところは多いのではないだろうか。それよりもわたしは「日本映画界の根本的な矛盾を指摘している」(解説・川本三郎)ところの方が皆さんにのみ込んでいただけそうに思えるので第7章(306〜307ページ)から引用させて貰う。
……普通の商売では、製造側と販売側はお互いにリスクを背負った上で、新製品を売り出す。しかし、映画界では、販売側=興行側はリスクを負わないで、その分を製造側=独立プロ側に負担させる。これは製造経費のほかに販売経費までも、製造側に負担させることである。
 ……翼プロダクション一九七八年製作『翼を心につけて』(堀川弘通監督、香川京子、フランキー堺、石田えり主演)の例を引けば、当時、前売り券は一枚千四百円で、前売り保証枚数は六万枚……
 この場合、六万枚ならば四千二百万円(六万枚の前売り券の半分の額)が、映画館上映の最低保証料である。この最低保証金で興行側は映画館興業を維持することができる。つまり絶対赤字にならない。……
 巻末の解説ではこう言っている。
……この日本映画界の矛盾──製作する人間がリスクを負い、配給興行側は安全地帯にいる、が後年の「世界のクロサワ」を苦しめ続けたことは明らかである。この問題はしかも、現在の映画界でも矛盾のまま残されている。……
 読んでいて義憤を感じない人はいないのではないか。わたしは映画監督のはしくれとしてはらわたが煮えくりかえる。
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by hiroto_yokoyama | 2010-02-01 18:40 | ブログ
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