『評伝 黒澤明』からもうひとつ引用

 見出しの本、69ページ、70ページ。
……ある時、クロさん(黒澤監督のこと)「監督になってみて初めて分かったことが、二つある。一つは監督になってみて、初めて作品の全体像が見えた、ということ。二つ目は、その日の撮影が終わって、『お疲れさん』と言って、さっさと宿に引き上げられるときの嬉しさったらないよ。お前も早く、俺の気持ちが分かるようにならなきゃ」と言っていた。実際私も監督になって、初めてこの気持ちを実感することが出来た。(アンダーラインの部分は原文では太字)
 わたしも『純』を撮ったとき上記のことを実感できたが誰かに話すのは照れくさかった。後者の『お疲れさん』と言って、さっさと引き上げることについては K.N.という製作主任が撮影所出身ではなかったため「スタッフの後かたづけを手伝った方がいいよ」などとヌかすので内心「バカが! 」と思ったが無視して家に帰った。いい気になっているのではない。監督としてつぎの日のコンテを考えるという大事な用事があるのだ。
 K.N.はこの数年後、自分の製作プロダクションが倒産しそうなので『フリーター』という映画の監督を引き受けてもらえないだろうかと頼みに来た。これっきりのつもりだったが次は(同じK.N.のプロダクションの企画)樋口可南子が『恋はいつもアマンドピンク』という映画の監督とは(波長が合わないので)どうしてもやりたくない、わたしにそいつに代わってやってほしいと言ってきたのでこの映画も撮ることにした。2本つづけて撮ったがそのかいもなくK.N.のプロダクションはやはり倒産した。(前の記事を参照してください)
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by hiroto_yokoyama | 2010-02-02 08:08 | ブログ
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