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田宮虎彦『寛永主従記』を読んだ

 作者・田宮虎彦の名前は『絵本』『足摺岬』などで知っていた。知っているだけで作品を読んだことはなかった。この『寛永主従記』を図書館から借りたときから読み惜しみをしながら読み進めた。興味深くて急いで読み終わるのがもったいない気がしたのだ。
 巻末の萩原得司氏の「解題」からいくつか引用させていただく。まず評言。
 河上徹太郎氏の「玄人の純真さ」、三島由紀夫氏の「小説家としての持ち前を持って居ながら詩人の心を持っている人」、滝井孝作氏の「これらの歴史小説には性根のある人物が出てくるので私は好きです」、大岡昇平氏は「歴史文学論」で、状況設定・人物心理の「造型に殆ど完全に成功している」と述べ、城山三郎氏は「人生に真正面から取組もうとする誠実さを押し貫いた末に、広々とした歴史の世界の中に、その鮮かな花を咲かせた」と森鷗外氏以来の硬質の歴史小説のよみがえりを見ている。
 田宮虎彦自身の言葉2つを引用。
 歴史小説を書くものは、歴史の中の人物が行為したところとしてかならず封建思想、封建制度、封建道徳と対決せねばならぬ。それを作品の世界でどのように解決するかが、作品を決定する重大な要素になることも、もちろん、いうまでもない。しかも、作家が生きている現実をふんまえて、それがなされねばならぬのである。
 もうひとつ。
 私は、人間の幸福をまもりぬきたいと思ふ。すべての人間の幸福をである。限られたごく少数の人の幸福のために、多数の人々の幸福をうばはうとする人があつたら私は、自分の幸福を賭してもたゝかひたいと思ふ。
 今の政治屋どもの多くについて言っているようにわたしには聞こえて仕方がない。
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by hiroto_yokoyama | 2010-07-07 08:45 | ブログ

北野武監督『その男、凶暴につき』を見た

 この映画は、わたしの記憶に間違いがなければだが、初め深作欣二監督がお撮りになるはずだった。深作監督は自分の企画のことはほとんど話されなかった。かりにご存命であってもご本人から経緯を聞けたとは思えない。
 北野監督『アウトレイジ』を見たいと思った。「そりゃ順番がちがう。やはり、『その男…』を見てからではないか」と思い直した。この映画にはわたしの映画にかかわったスタッフが2人ついている。チーフ助監督とカメラマンだ。2人とも現在、行き来があるわけではないので多くを語る気はない。少しだけ言えば、北野監督はたいへん義理堅い人らしく、助監督に1本監督させた。わたしは新聞発表でそれを知ったときビートたけしは偉い奴だとおもった。もうひとつ。カメラマンにはこの作品以後も何本も撮らせた。これにも驚いた。初監督するときに最も世話になるのがカメラマンとチーフ助監督(もちろん全スタッフのバックアップあってのデビュー作だが)。カメラマンを辛抱強く使い続けたのには驚愕した。我慢強い人なのだ。わたしに比べて(比較すること自体が北野監督に失礼だが)苦労の仕方が違うのだ。わたしは温室育ちのもやしだ。ビートたけしは、わたしが尊敬する数少ない映画人のひとりだ。なるべくはやく『アウトレイジ』を見に行こうとおもう。
 最後に北野監督が先週だかテレビのインタビューで『その男、凶暴につき』に触れていた。「(はじめて監督した映画なので)カットじりが甘かったりして恥ずかしい」と言っていた。これは監督のせいではない。カメラマンの技量だ。プロが見たら誰でも分かる。北野武監督もさすがに何本目かにカメラマンを他の人に変えたことに気づいた映画ファンはあまりいないのではないだろうか。(カメラマン交代が遅きに失したとわたしは断言する)
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by hiroto_yokoyama | 2010-07-03 09:29 | 映画