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「第60回ベルリン国際映画際報告 下」

 きょうの毎日新聞夕刊5面に元同紙映画担当の松島利行さんが署名入りの記事を書いておられる。わたしは「映画祭報告 上」が載っている新聞をさがした。なんと一週間も前、先月2月24日夕刊5面に出ている(間がぬけている)。しかも松島さんとは別の記者が書いた内容のうすいものではないか。以前なら同じ人が報告記事は書いていたのになぜこのように変則的なことをするのか訝しむ。
 松島さんの記事(下)に戻ると前回(上)に比べるとはるかに濃い内容だ。さすが松島さん。わたしは嬉しくなった。また古い話になるがわたしの監督第一回作品『純』はカンヌ国際映画祭で上映されたにもかかわらず日本国内での配給は1年しても決まらなかった。どの映画会社からも相手にされなかった。配給担当営業担当のだれもが「こんなもので客が来るか」とのこと。
 わたしはせっかく作ったのだから自分で映画館と交渉して自主上映で公開することにした。1980年(昭和55年)のゴールデンウィーク頃のことである。わたしの『純』はすべての人たちに馬鹿にされたかというと必ずしもそうではなかった。まずカンヌではじめて一般の人々に見てもらったとき故・田山力哉氏が気に入ってくださった。そのあと評論家では松田政男さん。新聞関係では松島利行さんたちが封切り以前から応援してくださった。(いわずもがなだが『純』の興行成績は配給収入で10億円を超えた。自主製作自主上映の映画でこの記録をやぶった作品はそれ以前はもちろんその後もない)
 新宿のゴールデン街で会って松島さんの行きつけの四谷のスナックに寄って明け方タクシーで千葉県市川市行徳のアパートまで送っていただいたことがある。わたしは酒に弱く首都高速を走るタクシーの中で吐こうとしかかった。運転手があわてて避難帯に停めてくれたので車内を汚さずにすんだ。さすがの松島さんも気が気ではなかったと思う。
 毎日新聞を退社なさってだいぶ経つが今回は「映画評論家」という肩書きで記事をお書きになっている。映画祭の報告記事はこんな風に書くのだという見本である。映画ファンの方は是非お目をお通しください。楽しめて勉強になる記事ですよ。 
by hiroto_yokoyama | 2010-03-03 18:01 | 映画
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