谷川雁『原点が存在する』(講談社文芸文庫)の松原新一氏の「解説」から少し長いが引用させて貰う。
谷川雁が……農民や炭鉱労働者との連帯を実践的に生きようと願ったとしても、だからといって、ただの民衆の一人になり得るわけではない。「サークル村」の活動からその後の大正炭鉱の合理化反対闘争に至るまで、谷川雁と一労働者として行動をともにした加藤重一は、「……谷川雁という人は出自が悪い。眼科医の次男として生をうけ、幼少をねえや(原文は「ねえや」に傍点)つきというふざけた環境で育てられ、秀才の名をほしいままにしつつ熊本中学・五高から東大へとエリートコースを歩む。どこに労働運動に関与しなければならない必然性があったのだろうか。彼は胃の腑の要求からではなく、いわば純粋に思弁の世界で彼の思想を構築したのであろう。釈迦だって何不自由ない王子だったというから、ありえないことではなかろう。生前、直接その種明かしを聞くことはなかったが、彼を味方として受け入れるためには、私などは瀬踏み期間を必要とした」と、出会った頃に覚えた秀才の知識人谷川雁に対する違和感・警戒感の強くあったことを告白している(「大正闘争」・第Ⅲ期「サークル村」第2号、二〇〇三年秋)。 谷川雁にわたしが似ている点は「ふざけた環境で育てられ」たところだけ。谷川は秀才。わたしはただの女好きの鈍才。えらい違いだ。加藤という人が谷川は「出自が悪い」という処がおかしい。その伝で行くとわたしは出自が良いのであろうか。
by hiroto_yokoyama
| 2010-04-10 18:25
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