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田草川弘『黒澤明vs.ハリウッド 『トラ・トラ・トラ!』その謎のすべて』(文春文庫)をいっきに読んだ

 この本のことは4年前に単行本が刊行されたときから知っていた。著者には申し訳ないがタイトルがなんだかキワモノっぽくて手に取ることもしなかった。しかし書いた人が田草川(たそがわ)さんという映画評論家でない方というのが気にはなっていた。映画評論家は監督になろうとしてなることが出来なかった人間が多いことから評論家をわたしはおおむね信用しないのだ。
 先月、文庫になったらしく書店で手にしてすぐ買った。いっきに読み終わる。付箋紙を貼りまくっている。わたしの知らないことがたくさん書いてある。どんな本か田草川さんの「文庫版のためのあとがき」から引用する。
 一九六八年十二月に起こった『トラ・トラ・トラ!』黒澤明監督解任事件。
 クロサワが生涯最大の屈辱を受けたあの事件は何だったのか? 何故起こったのか? そして、夢幻と消えたクロサワの真珠湾物語は、我々に何を語りかけようとしたのか?

 映画評論家ではない著者はアメリカに取材して第一次資料を渉猟して書いている。それだけに圧倒的に読む者に迫ってくる。わたしは今読み終わって言葉がでない。
 表紙カバーに本作『黒澤明vs.ハリウッド』で、ノンフィクション作家として史上初の4冠受賞を達成した。とあるのははじめ何のことかと思った。著者自身びっくりなさったようで「文庫版のためのあとがき」に書いている。
 異例といわれた四賞受賞は、第二十八回講談社ノンフィクション賞、第三十三回大佛次郎賞、第五十七回芸術選奨文部科学大臣賞、第三十八回大宅壮一ノンフィクション賞の順。この他、キネマ旬報社の映画本大賞二〇〇六でベストワンに選出された。
 映画評論家には書けないものだというのは読んでいて分かったがこんなに賞を貰った本とはまったく知らなかった。
by hiroto_yokoyama | 2010-04-30 10:55 | 映画
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