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山本嘉次郎監督『ハワイ・マレー沖海戦』をようやく見た

 昭和17年(1942年)に「太平洋戦争開戦一周年記念映画として、大本営海軍報道部企画、海軍の全面的協力によって作られた戦争スペクタクル作品である」と解説に書かれている。
 監督は小学生のころNHK人気番組『私の秘密』のレギュラー回答者だった山本嘉次郎。いうなれば、「幼なじみ」。その監督の撮った映画ということでタイトルは以前から知っていたが「戦意高揚」映画を忌避する気分が強く、たぶん見ることはないとずっと思ってきた。
 ところが田草川弘氏『黒澤明vs.ハリウッド』(文春文庫)に
 山本嘉次郎監督が書いた『ハワイ・マレー沖海戦』の脚本と黒澤明監督らによる『虎 虎 虎』「準備稿」には、とても偶然とは思えない類似点が数多くある。
 とあり、内容については
 ……簡単に言えば、田舎育ちの純朴な中学生の少年が飛行機乗りに憧れて海軍に入り、猛訓練の結果一人前のパイロットに成長して真珠湾攻撃に参加するまでの五年間をセミ・ドキュメンタリー風に描いた一種の教養小説(ビルドウングスロマン、とルビ)とも言うべき体(てい、とルビ)をなしている。その中でいくつかの師弟関係を組み合わせ、全体を青春群像劇に仕立てている。
 ビルドウングスロマンと聞けば見たくなる。数日まえガールフレンドからの連絡待ちの無聊を慰めるためにビデオで見た。見はじめると115分の長さだが引き込まれた。解説に
 一九四二年一二月に「開戦一周年記念」として封切られ、未曾有の大ヒットとなった。
 とあるがこの映画が今日まで永らえているのは決して「戦意高揚」映画だからなのではない。あの円谷英二特撮監督の功績が大であることは誰が見ても明らかである。この12年後あの『ゴジラ』が世に出た。
by hiroto_yokoyama | 2010-05-08 09:21 | 映画
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