わたしはよほど間の抜けた、人のいい顔をしているのか街を歩いていてよく見知らぬ人から道を尋ねられる。若いときはなんだか馬鹿にされたようで反発心から意地悪な応対をしてみたりした。ある日などデパートのエスカレーターに乗り込んできた赤ん坊と目が合った。その子がいきなり「パパ! 」とわたしに腕を伸ばしてきた。「何を言うの! 」と若い母親は男の子がわたしに行かないように抱きすくめた。その女性の狼狽ぶりは、ちょっと気の毒なくらいだった。
人間ばかりではなく、犬や猫からもわたしはあまり警戒されない。わが家で飼っているヒデユキという猫は駅前でわたしについてきてそのまま居着いた。 前置きが長くなったが、わたしはたいへん早熟だったので10代のころから同級生や先輩の女性からよく相談された。わたしは相手に警戒心を抱かせないといえば聞こえはいいが、他人の秘密を聞き出すのがうまいのかも知れない。 25歳で東映の助監督になってからは露骨な質問が多くなった。女性に接する機会が増えたからだろう。タイトルに書いたようなことをずいぶん聞かされた。この間、眠れないままに指折り数えたら数十名に及んだ。最初は「ほんとかな? 」と眉に唾をしていたのだが、話す女性の顔を見ているとまんざら嘘を言っているとも思えない。 近松門左衛門を読み始めたころから、「あ、この問題は江戸時代にはぜったいに存在しなかった。むかしはイッたふりなどする必要はなかったに違いない」と思え始めた。ではいったいいつごろから演技する女や、まんまと騙される男が現れたのだろうか? なんの根拠もないわたしの憶測を言えば、日本の近代化の過程で妙な男女が増えてきたのではないだろうか。あてずっぽうだが富国強兵、脱亞入欧など教科書でならったあの頃からではないだろうか。データがあるわけではない。わたしはよきポルノ小説の読者ではないし、研究家でもないがクラフト・エビング(ドイツの変態性欲の研究家といわれた人のようだ)の翻訳本などにヒントになることが書いてはしないかと探すのだが、まだ見つけていない。 わたしの結論。男女に限らず現代人は心を通わせることがなぜこんなに下手になったのだろうか。相手に対して猜疑心の固まりをもったまま、うわべだけの会話を延々とくりかえしても時間の無駄。疲れるだけ。何かあればすぐ人のせいにする。これでは気持ちが通い合うなどと言うことは永遠にない。まず裸の自分を見せること。逆に人間がどんどん小さくなってそうすることがますます恐くなる。それが今という時代。なぜこんなことになってしまったのか? 『小平次伝説(仮題)』のテーマはこれかな? と考えている。
by hiroto_yokoyama
| 2004-09-22 22:38
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