フランツ・カフカという作家をご存じだろうか? 彼は自分の書いたものを人に読ませる気などなかった。友人に自分が死んだら原稿を破棄してほしいと頼んだらしい。その友人がカフカとの約束を破ってカフカの死後その作品を世間に発表した、となにかの本で読んだことがある。
高校生のとき学校の図書館で新潮社版カフカ全集をみた。装丁がよかった。なんのまえ知識もなく借りて読んだ。たしか『城』だった。男が城へ行こうとするのだが、たどり着けない。なんだか、夢のなかのような話だった。最後まで読まずに返却した。『変身』というのもある。ある朝目が覚めたら自分が虫になっていたという話。これも読了した記憶がない。ジャン・ピェール・メルビルという監督がわたしは好きだがたしか『リスボン特急』だったと思う(違うかも知れない)。作り物のカメレオンが画面に出てきて驚いた。それを見たときにわたしはカフカの『変身』のことを思い出してちゃんと読もうとそのときは心に期したもののきょうに至るまで果たせないでいる。 まえにもこの本のことは書いたが『定年後をパソコンと暮らす』(加藤仁著、文春文庫381)をひっぱりだした。第四章は「独創的リハビリテーション」。パソコンをリハビリに活用する例が書かれている。同書174ページに「かって画家として『俺が俺がの自我』を主張する世界に身をおいた。だがそうして名作を完成させたところで……」とある。その1行がみようにひっかかっている。 カフカは(いまは統合失調症と呼ばれるが)精神分裂病だったらしい。わたしは医者に行ったらなんと診断されるのだろうか? そんなことはどうでもいいがわたしも知らず知らずのあいだに「俺が俺がの自我」を主張する世界にいたことは確からしく思える。人に見せる映画などのことは考えずに自分ひとりが楽しむつもりでシナリオを書き、書きながら撮る、撮りながら書くそんな作業をすると日々がもっと楽しく充実するのではないか。その作業の裏話をこのブログで書く。肝腎なシナリオは誰にも読ませないし、完成した映画は見せない。そう決めるととても愉快だ。しかもこんな贅沢(? )なことはない。 鰻の蒲焼きのにおいだけをかがせて食わせない。「マンコウ(鰻香)」の話をわたしにした男がいた(たしかいまでも自分のホームページでわたしのことを好き勝手に書いているようだが)。映画のにおいだけを嗅がせて映画は見せないわたしのこのブログは鰻香になぞらえるならなんと呼べばいいのか。 「自分にも生活がある」と思う人がこのブログを読んでも糞の役にも立ちませんよ。
by hiroto_yokoyama
| 2005-06-05 10:47
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