新渡戸稲造『自警録 心のもちかた』(講談社学術文庫567)、ルソー著・今野一雄訳『孤独な散歩者の夢想』(岩波文庫 青523-1)、石川達三『充たされた生活』(新潮社。これは2冊目かも知れない)、『勅使河原宏カタログ』(草月出版)
『自警録』306~307ページ。「人はパンのみにて生くるものにあらず」〔マタイ四の四〕が目にはいった。そこのところを引用する。 「人はなんで活(い)きているかというに、理想で活きている。ただ呼吸(いき)するだけならパンだけでもよい、パンでなくとも、握飯(にぎりめし)でも麦飯(むぎめし)でもよいけれども、この世に生きている甲斐(かい)には、なにか理想がなくてはならぬ。前の犬のごとくなにか前にぶらさがっているものを得ようと思うから動くのである。われわれのすべての働きは理想を実現せんためで、理想なしにぶらぶら流れのまにまに活(い)きていることは存在するというだけで、人間の生活をしているとは言いがたい。ことばを換えていえば、人間の生活なるものは理想を実地に翻訳することになりはせぬか。 理想という原語(げんご)を行為に翻訳するのである。わからぬ外国語をわかるような言葉に換えることを翻訳というと同じく、もやもやしており、あるいははっきりしても形のない思想を、実際の言行に現すのである。これが人生というものではないかと思う。」 この本が440円(定価は880円)というのは安いと思いませんか。 『孤独な散歩者の夢想』(定価360円だが半値の180円)は書き出しが気に入った。 「こうしてわたしは地上でたったひとりになってしまった。もう兄弟も、隣人も、友人もいない。自分自身のほかにはともに語る相手もない。だれよりも人と親しみやすい、人なつこい人間でありながら、万人一致の申合わせで人間仲間から追い出されてしまったのだ。人々は憎悪(ぞうお)の刃(やいば)をとぎすまして、どんな苦しめかたをしたら感じやすいわたしの魂にこのうえなく残酷な苦痛をあたえることができようかと思いめぐらしたすえに、わたしをかれらに結びつけていたいっさいのきずなを荒々しく断ち切ってしまったのだ。……」 『充たされた生活』(100円)の箱の裏に、 「今日の女性にとって、充たされた生活とは何なのか、作者はその課題と真正面から取り組んでいる。……」という宣伝文句があった。 『勅使河原宏カタログ』 わたしは勅使河原宏監督『砂の女』を福岡で封切りで見た。その後アートシアターで『おとし穴』も見た。『他人の顔』『燃えつきた地図』もみんな見た。でもやっぱり『砂の女』がいちばん好きだ。100円だったからこの本も買った。
by hiroto_yokoyama
| 2005-06-11 21:52
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