木田元『猿飛佐助からハイデガーへ』(岩波書店)を図書館から借りてきた。85ページに金子光晴の詩『洗面器』が載っている。
洗面器 (僕は、長年のあひだ、洗面器といふうつはは、僕たちが顔や手を洗ふのに、湯、水を入れるものとばかり思つてゐた。ところが爪哇(じゃわ)人たちは、それに羊(カンピン)や魚(イカス)や、鶏や果実などを煮込んだカレー汁をなみなみとたたへて、花咲く合歓木(ねむのき)の木陰でお客を待つてゐるし、その同じ洗面器にまたがつて広東(カントン)の女たちは、嫖客の目の前で不浄をきよめ、しやぼりしやぼりとさびしい音を立てて尿をする。) 洗面器のなかの さびしい音よ。 くれゆく岬(タンジヨン)の 雨の碇泊(とまり)。 ゆれて、 傾いて、 疲れたこころに、 いつまでもはなれぬひびきよ。 人の生のつづくかぎり 耳よ。おぬしは聴くべし。 洗面器のなかの 音のさびしさを。 (カッコ)は原文ではいつものことだがルビ(フリガナのこと)。エキサイトブログの限界でルビはふれない縦書きもできない。不自由だ。太字の部分はあなたの持っているワープロソフトで縦書きにして読んだ方がいいかもしれません。 なぜ引用したかと言うと、昨年ブログをはじめたころわたしの健康法の紹介で朝ウンコをしたら風呂場でM字型になって必ず尻を洗うと書いたことがあった。金子光晴の『洗面器』は金属製。アルマイトとか真鍮とか、ステンレスとか。ステンレスはそのころなかったかもしれない。わたしの家にあるのはプラスチックというのか石油などからできるのだろうか化学製品。音がまるきり違うわな。みなさんも試してみてくださいよ。では『洗面器』をリフレーンしますね。 洗面器のなかの さびしい音よ。 くれゆく岬(タンジヨン)の 雨の碇泊(とまり)。 ゆれて、 傾いて、 疲れたこころに、 いつまでもはなれぬひびきよ。 人の生のつづくかぎり 耳よ。おぬしは聴くべし。 洗面器のなかの 音のさびしさを。 きょうは日曜日、タクシーは休んだ。上記の記事は先週木曜日(6月16日)に書いたもの。エキサイトブログがメンテナンス中のためにアップできなかった。削除するのはおしいのでこのまま載せる。
by hiroto_yokoyama
| 2005-06-19 11:11
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