きのう(11月17日)タクシーの仕事がひまだったので客待ちのあいだ上記の本をむさぼり読んだ。読みおわるつもりだったが夜になりおしまいまでいけなかった。さきほど昼ご飯を食べるのも忘れてやっと読了。ふかい感動を覚えている。巻末の渡邊二郎氏の「解説」などは購入した日(10月28日)にも目を通していたがもう1度しっかり読み直した。
西氏の本文よりほんの一部分を引用させてもらおう。 「…客観的現実の信念の不可避性を理解するというフッサールの方法は、こうして、客観的真理を否定するのでも無批判に肯定するのでもない態度を可能にした。それは現代思想の多くが客観的真理を否定し相対化するのに比べて、〈真理〉批判をはるかに先まで推し進めたといってよい。 しかし現代思想の〈真理〉批判は、フッサールが知らなかった状況から起こっている。マルクス主義によって社会と歴史の説明が絶対化され、そこに自然科学の絶対化と似た一種のアンチノミー(客観的世界と実存的生との対立)が発生し、そして恐るべきテロルが生まれたのだった。 序章でもふれたように、この問題を考えるためには、一方で、社会科学や歴史学の営みの前提とその意味とを深く理解することによってその絶対化を避け、その営みが私たちの生に寄与するものとなるための条件を取り出すことが必要であり、他方で、生の意味を求めてやまない人間存在の特質への問いが必要となる。 とくに後者は、現代において緊急な重要性をもっている。十九世紀の末、キリスト教の信仰が滅びゆくなかで、ニーチェはニヒリズムの到来を予言したのだった。包括的な世界像によって生の方向が与えられる時代が終わり、何が価値あることか何を目標とすべきかを一人一人が打ち立てなくてはいけない時代がやってきた(かってにアンダーラインを引いたのは横山です)。フッサールのいった「学問の危機」は、いまや「世界像の危機」へとその深度を増したといえるかもしれない。 そのような時代に、人間的な生のあり方――人間的欲望の本性や法や正義の意味等――をあらためて深く了解し、共有していくことができるなら、それは私たち一人一人がみずからの目標を打ち立てるうえでも、またともに社会のあり方をより好ましいものへと動かしていくためにも、大きな力となるだろう。そうした方向にこそ、現象学的思考の大きな可能性と領野があると思う。…」(『哲学的思考』390ページ~391ページ) ここだけをまじめに読んでもこれだけではなんのことか分からないかも知れない。ご心配なく。わたしはこの本を3週間かけてちゃんと読んだので少しはなんのことか分かるつもりです。ではなぜながながと引用したかと言えばブログによって「人間的な生のあり方をあらためて深く了解し、共有していくことができる」かも知れないなどという甘い幻想を一部のブロガーにわたしが期待するからなのです。 日本中いや世界中でひとりでもふたりでもいい。この本を読んだ方はトラックバックしていただきたいものです。
by hiroto_yokoyama
| 2005-11-18 18:06
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