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ヒッチコックと植草甚一

 植草甚一と言っても若い人はほとんど知らないだろうが、わたしはJ・J氏の大ファン。『植草甚一スクラップ・ブック5 サスペンス映画の研究』(晶文社)という本を書棚から引っぱり出した。1977年(昭和52年)2月10日に池袋の旭屋書店で780円で購入したと奥付に鉛筆で書いたメモがある。その11ページ。
映画観客や読者は、それが現実的に自分に起こる気づかいはないと知りながら、同時に主人公が絶対に死なないことを知っている。これが約束ごとになっていた。
 この約束をやぶったため、さすがのヒッチコックも大失敗をやらかしたことがある。それは「サボタージュ」という映画で、ロンドンの地下鉄ストライキがテーマになっていた。そして組合幹部の一人が、小さな映画館を経営しているのであるが、クライマックスへさしかかったとき、映画館主はフィルム鑵
(かん、原文ではルビ。横山の注釈)のなかに時限爆弾を仕込んでから、息子の手で地下鉄終点へと運ばせ、車輌の爆破をたくらむ。観客のほうではフィルム鑵の中身を知っているし、爆発する時間もわかっているのだが、このかわいい少年が途中で道草をくっているあいだハラハラしながら見ている一方、まさか少年が命をおと(以上11ページ)すとは考えてもみない。それが約束ごとになっているからである。ところが時間ぎれとなり、地下鉄の駅へとむかう電車のなかで時限爆弾が破裂し、乗客といっしょに少年は即死してしまった。
 このとき、ヒッチコックは散々にコキおろされたが、
…(以上同書12ページ)
 1977年と言えば「映画を撮ろう」(監督になる)と決心した年。『サスペンス映画の研究』のいたるところにわたしは線を引いていた。なつかしい。
 何日か前ヒッチコック『サボタージュ』を見たあと、後味が悪かったが、きょうの午前中『救命艇』も気分がよくない映画だった。夕方、口直しに近所のビデオ屋で借りて見たた『逃走迷路』(DVD)で機嫌を直した。
by hiroto_yokoyama | 2006-03-15 22:55 | 映画
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