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広沢栄脚本『いやな感じ』(原作:高見順)の手応え

 深作欣二監督の葬式の日。東映東京撮影所の演出部の先輩たちと酒を飲んだ。席上、Hという人が『いやな感じ』の話をし出した。わたしは文庫本で持っていたが積ん読で未読だった。神波史男氏がシナリオを書かれたということも知ったので後日、直接ご本人に読ませていただくようお願いしていたが原稿をお借りするタイミングを失してしまっていた。
 1964年7月号の「シナリオ」に広沢氏の『いやな感じ』があるのを知り昨晩からむさぼり読んだ。いかんせん43年前のもの。つまらなければ途中で放り出せばいい、そう思って読み始めたがやめられなくなりさっき読了。北一輝が「南」になったり、西田某が「西口」に変ったりしているのが気になる。二・二六事件など史実とフィクションをまぜあわせて成立っているのは時代の限界かもしれないが、ともかくこのシナリオは読ませる力がある。
 なにかの雑誌で深作監督が「いやな感じ」というタイトルじゃ映画にしても誰も見に来ないのじゃないかと言っていたというところを見た。古いシナリオ誌の目次には「……ベストセラーの高見順原作「いやな感じ」の映画化」と紹介されている。「映画化」とあるけれど映画には確かなっていないはず。へぇ、昭和39年頃この小説はよく読まれていたのか? とすればどんな人たちが読んでいたのだろう。
 原作の主人公よりも広沢脚本の主役、加柴四郎(19~33才)のキャラクターにわたしは魅力を感じる。(むつかしい原作を広沢栄はうまく脚色している)
by hiroto_yokoyama | 2007-05-21 09:08 | 映画
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