ひとつきほど前に古本屋で何気なく手にして購入した脚本家・橋本忍氏の本。昨晩、宮脇俊三著『室町戦国史紀行』の「鉄砲伝来」の章を読んだら『戦国鉄砲商人伝』のことを思いだし押し入れからひっぱりだした。
織田信長のことを映画にするにしても彼を主人公にしてはつまらないもの、小さなものにしかならないだろう。わたしは漠然とそう考えてきた。さすが橋本氏、着眼点がいい。主人公はポルトガル人、コンスタンチン・オルガーノ。12、3歳の信長がこのオルガーノに鉄砲100挺を発注し本能寺で光秀に殺されるまでをこの異国の男の目を通して描いている。橋本氏は「あとがき」をつぎのように書きはじめておられる。
この作品は途方もない不思議な大きな物になる予感がしていました。
たしかにその通り「大きな物」になっているとわたしは思う。
……
いつの日にかこれをとの気持ちも強かったのですが、この仕事を終れば、その後は小さいものには興味の持てなく恐れ……
があって、
……
自分の腕が技術的にもっと進んで一番円熟した時を待ち、改めて座り込めばいい……
その時を待って満を持して書かれたものだけに圧倒されて当然です。わたしなどには死んでも思いつかない「信長に鉄砲を売ったポルトガル人の目を通して」描くなどとは……。脱帽しました。