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『現代漫画9 白土三平集』(筑摩書房)を読む

 巻末に鶴見俊輔氏の「死にかわり、生きかわり ―作家と作品―」が載っている。自分のための備忘録としてほんの少し引用させて貰う。
……白土三平がどういう勉強をしてきた人かはよくわからないが、彼に大きな影響をあたえたものの一つはシートンの『動物記』である。ここから彼は、動物生態学に関心をもち、人間の歴史を、自然史・進化史の大きな視野の中で見ることをまなんだ。人間の歴史について、彼は、日本の民間史学を独自の仕方でうけついでいる。山路愛山、石井研堂、田村栄太郎、服部之総、羽仁五郎、石母田正、の系譜に、白土の仕事をおくことは、唐突ではないと思う。……
 羽仁五郎(拙作『純』に出演していただいている)、石母田正のお二方の名前以外は不勉強なわたしは知らない。
 収録されている白土三平の漫画(『ざしきわらし』)では366ページに「ヤイ おまえ なんか あっちいけ!! 」(小さな女の子を悪ガキがつっぱねる絵)に続いて「ワーイ 三ツ口 モグモグ ウサギの子!! 」「うちへ けえって ニンジン かじれ!! 」というコマが現われるのを見てわたしは驚倒した。
 つぎの367ページの下の方で「(てて、ルビ)なし 子は その子の せいかな…… 三ツ口 じゃとて 同じじゃ。」とざしきわらしが子供に説教するコマがあり、「おらが わるかっただ おら あの子に あやまるだ。」「うんだ。 着てる ものや 目はな だちで 人を見る ようになったら しまいじゃ。」という子供とざしきわらしのツーショット。このページの最後は「おらち へ いこうや。」「おら いつも おまえの 味方だ……。」(吹き出し2つ)悪ガキ5人を背景に三ツ口の少女と子供2人のほのぼのとした表情の絵でおわる。
 この2ページを見ただけでも白土三平という漫画家をわたしは信用できる人だと思う。
by hiroto_yokoyama | 2009-04-16 19:35 | ブログ
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