わたしは枕頭に「ちくま文学の森 悪いやつの物語」という本をおいている。ぱっとめくったらきょうは見出しに書いた短篇がでてきた。いつもあめ玉をペチャペチャ舐める(わたしは本物の飴はけっして音をたてないで舐めるが)ように味読する。
みかどの三番目の姫宮(ひめみや、ルビ)がとっても魅力的だ。彼女が竹柴ノ小弥太に初めて声をかける。
「おのこ、おのこ。もっとこちらに寄るがいい」
姫は小弥太の独り言を聞いて興味を持ったのだ。
(姫)
「東から風が吹けば……?」
(小弥太)
「はい、西にユラリ」
(姫)
「南から風が吹けば……?」
(小弥太)
「はい、北にユラリ」
小弥太はじぶんの故郷のことを独りごちていたのだ。
(姫)
「このわたしを負ぶって、そこまで逃げておくれ……」
姫はのどが渇けば
(姫)
「おのこ。水を賜(た)
べ」
腹がへれば
(姫)
「おのこ。供御(くご)
のモノは?」
なんとものどか、というか奇妙なおかしみのこもった会話がつづく。
悪いやつは小弥太か姫か。興味をお持ちの方は是非『光る道』を手にしてみてください。わたしはこれから昼ご飯です。