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ホーソン『デイヴィッド・スワン ある白日夢』を読んだ

 松本清張が若いころ読んで影響を受けたという木村毅『小説研究十六講』のなかで見出しの短篇が紹介されている。図書館を検索したら『ナサニエル・ホーソン短編全集』(國重純二訳、南雲堂)というのがⅠ、Ⅱ巻でてきた。『デイヴィッド・スワン』が載っているかどうか分からないが2冊とも借りてみた。するとⅡ巻に載っていたのでいま読んだ。不思議な話だ。若者が森の木陰で眠っている。その脇を金持ちの老夫婦。若い娘。悪党ふたり。それぞれが思惑を抱いては通り過ぎていく。むろん若者はそれを知らない。彼は目覚めてやってきた駅馬車に乗って去る。というお話。黒澤明監督『羅生門』の映像を思い浮かべつつ読みおわった。
 わたしは高校のとき英語の家庭教師についてもらったことがある。副読本でホーソンの『大顔面石』というのを読ませられた。グレート・フェイス・ストーンだったかグレート・ストーン・フェイスだったのかも覚えていないからまったくいい加減な生徒であった。そのころたまたま新聞で同じホーソンの『緋文字』のことを見た。「姦通の話」であると知ってこちらの方に興味がわいた。いやらしいことを想像したのである。なんどかこの『緋文字』に挑戦してみたがいつも挫折した。はじまりが姦通とは縁遠い税関かなにかの話なのでエロチックな雰囲気のカケラもない。この小説は有名なのでご存じな方もいらっしゃるだろう。
 いずれまた『緋文字』には接してみるつもりだが急いで『大顔面石』の訳に目を通したくなった。『ナサニエル・ホーソン短編全集』のⅢ巻に『人面の大岩』というのがあるようだがたぶんこれだ。しかしこれはどうやら未刊のよう。図書館の目録を見たとき他の訳者のものがあったような気がする。早速予約してみようかな。
by hiroto_yokoyama | 2010-02-13 06:48 | ブログ
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